私の書道観

  書と指導者
 
町内やカルチャー教室で頻繁にみられる「書道教室」の看板・・・。しかし、「ほんもの」を教えることのできる指導者は
どのくらいいるのだろう、と疑問に思うことがあります。「ほんもの」とは「指導者」とは、そして「書の本質」とは・・・などと延々と少ない頭で考える日々です。
  ただ、周囲を見渡しますと、「単に面白い」「特別な苦労(技術)など不要」「時間をかけずに完成する」といったものを、書作品として捉えられている指導者、また、その教えを受ける方が非常に多くおられるように思えてなりません。
  仮に、そのように定義されたものが書道芸術であるならば、今に至るまで存在することは、不可能と言っても過言ではありません。
※当ブログ記事より「表現の自由・現代性という名の隠れ蓑」もご参照ください。

 現代感覚に馴染む書
 
「いつまでも昔のものに拘泥していては、現代感覚に馴染むものができない」という考えをお持ちの方がおられます。
 勿論、それは一つの考え方で尊重すべきであると思います。しかし、小生には、どうも賛同できかねる点があるのです。
  現在、書の世界では「漢字かな交じり書」が流行しております(書道団体によっては「近代詩文書」「調和体」など、色々な呼び方をしています)。
  しかし、名前は違えども、『誰にでも読める書』という事柄でその趣旨はほぼ共通しています。特別な書の勉強などしていなくても、とにかく「読める」ことで一般の方々に書を受け入れてもらおう、という方向性が今の日本の書道界の流れです。つまり、作品そのものの価値よりも、「可読性」が重視される傾向にあります。
  以前、国内最大規模の公募書展で、作品の横に釈文読みにくい筆跡や漢文を、読みやすい字体・文体に直したものを付し、書に携わったことのない人々にも親しんでもらおう、という試みが行われていました。
  ただ、残念なことに、釈文を読んですぐ作品の横を通り過ぎる、というケースが比較的多くありました。書を、できるだけ多くの方に理解していただくことの難しさを垣間見たように思います。
  これでは「書を観る」というより、「文字を見る」ことで終わってしまいます
 
  私が考えるこれからの書
  確かに現代の流れにマッチした、斬新さ溢れる要素も大切です。しかし、それに加えて、永く多くの人々に寵愛されてきた
古典による裏付けも必要となります。それが存在して初めて、現代感覚云々といった議論が有意義に行われるのではないかと
考えるのです。
  『斬新さのみを追究したものは寿命が短い』。今まで書に接し、つくづくそう思います。
  「古典、古典」と言い続けると、特に書に携わったことのない方は、最初は抵抗を感じ、それの学習に重きを置かない教室に足を運ぶことになりがちです。しかし、私はあえて「古典学習に立脚した作品創りを行うこと。それが必ずや、万人が書の本来の姿を捉えることが可能になる手段である」という観点から考えます。そして、それを啓蒙することに繋がると信じてやまない自身でございます。
  ただ、「張り詰めた空気の中で、古典を数多く勉強さえしていればよい」と申し上げているのではありません。折角、格調高い古典を学習するのですから、これを日常生活の中に取り入れ、現代感覚溢れた明るい書を制作することの意義は大きいと思います。いわゆる「暮らしの中の書」も、大切にしていきたいと考えております。また、当書道教室でも、そのような小作品
を制作する時間を設けています。いつまでも古典だけを頼りに作品制作を行うと、芸術家としての創造性を考慮したときに若干の疑問が残ります。
  書家はときには「古典から脱却する勇気」も必要です。しかし、古典の臨書をしっかりしていれば、何らかの古典を思い浮かべるような作ではなくとも、「ほのかに古典の薫り漂う作品を制作することができます。また、それが書家としての本来のあるべき姿であり、書作品としての姿であると考えます。
   書の答えは一つではありません。しかし、『間違い』は確実に存在します。それを回避するために、私は生徒に古典臨書の重要性を説きます。
  古典を踏まえながらも現代感覚に富んだ書作品制作。それが自身の一生の課題です。
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